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今日は何があっても早く帰らなきゃ!
隣の席の大野くんに「パソコンを壊す勢いっすねー」とからかわれながらも一心不乱にパソコンを打ち続けたけれど仕事はなかなか片付かず、結局会社を出るのが遅くなってしまった。
そうちゃんの席を見ると既に退社したようで、机の上はきれいになっている。
スマホには “先に帰ってる。仕事が終わったらウチに来て” と、そうちゃんからのLINEが入っていた。
受信時間は2時間近く前。随分と長い時間待たせちゃってる!
“今、仕事が終わったよ。これから向かうね”
LINEを返信し、小走りでそうちゃんの家に向かった。
マンション前に着くと、そうちゃんがタイミングよくエントランスから出てきた。
驚く私にそうちゃんは
「お〜!ピッタリだったねー」
と、この絶妙なタイミングを楽しむかのように笑った。
「遅くなってごめんね。わざわざ出てきてくれたの?」
こんな風に外まで迎えに来てくれるなんて初めて…
「お疲れ様。早く中へ入ろう」
そうちゃんは戸惑う私の背中にそっと手を当て、優しくエスコートした。
何で?怒ってないの…?
困惑しながらエレベーターに乗り込み、操作盤の前に立つそうちゃんの背中を後ろから見上げる。部屋のある5階まではたった数秒程度なのに、無言の時間はとても長く感じた。
部屋に入り、向かい合って座った。
まずは謝らなきゃ。
「あの…」
私が言いかけると、それに被せるように
「昨日は言い過ぎた。ごめん」
そうちゃんが頭を下げた。
「私の方こそごめんね」
またもやそうちゃんに出遅れてしまったけれど、やっと素直に謝ることができた。
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