田中さん

16/17
1622人が本棚に入れています
本棚に追加
/429ページ
「あーあ、初めてケンカしちゃったなー」 「しかもかなり派手にね」 「でもさー、ケンカするのは仲良い証拠って言うじゃん?思ってることを言い合えるって大事なことだよ」 「そうだよね!」 きっとこれからいろんなことでケンカするんだろうな。 「しかしアヤちゃんって意外と意地っ張りだよね。次の日のお昼まで電話もLINEも無視だもんな〜。 まさか半日以上スルーされるとは思わなかったよ」 「違うの!昨日はたまたま早く寝ちゃっただけで…」 ここまできてまだ言い訳をする私。 「わかったわかった。そういうことにしておくよ。 でも今朝も係長にだけ笑顔で『おはようございまーす』じゃん?そこまでくるともうおかしくて…」 本当におかしそうにケラケラと笑うそうちゃん。 そんなにあからさまな態度を取ったつもりはないんだけどな…恥ずかしくなって口を尖らせ、拗ねたフリをすると 「でも子どもみたいでかわいかったよ」 頭をよしよしされ、私を完全に子ども扱い。 なんかいつもと立ち位置が逆? でもたまにはいいよね、こういうの。 「さて、ウマいものでも食べに行こうか!こんな時間だけど」 「やったー!あっ、でも今から食べたら太るじゃん」 時計を見ると随分と遅い時間。美味しいものは食べたいけどちょっと迷う。するとそうちゃんは 「大丈夫だよ。後で痩せるくらい…ね?」 いたずらっぽく笑って私を見た。 「明日会社休みだよ。帰る気?」 キャ〜!そういうことね。 「帰らないっ」 そうちゃんの耳元に顔を寄せ、甘えた声で囁いた。
/429ページ

最初のコメントを投稿しよう!