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“こんなことならもっとラクでオシャレなサークルにすればよかったな…”
そんなことを考えつつ後片付けをして重いケース持ち上げようとした時、横からすっと伸びてきた手がそれを軽々と持ち上げた。驚いてその顔を見るとユウキだった。
「私が持って行くから大丈夫だよ」
慌ててケースを奪おうとすると
「無理するなよ」
ユウキはぶっきらぼうに言い放ち、さっさと歩いて行ってしまった。
私は慌ててその後を追いかけ、ユウキが倉庫へしまうのをただ見ていることしかできなかった。
「これで終わりだな。じゃ、お疲れー」
ユウキは何もしていない私にそう言って、更衣室に向かおうとした。
「あの…」
「何?」
私の呼び止める声に気づいたユウキは振り向いた。
「ごめんね、全然役に立たなくて…」
「何で?いろいろやってくれてるじゃん」
「だって片付け一つできないし、何やっても鈍臭いし…」
「そうか?頑張ってると思うけどな。
片付けだって手の空いてる奴がやればいいんだし、重い物は男が持てばいいんだよ」
ウジウジする私に対し、ユウキはさらっと言った。
「頑張ってるのと役に立つのとは別だよ」
「大学に入ってまでマネージャーやろうなんて子、なかなかいないもんな。本当は自分達でやらなきゃいけないことをやってもらってみんな助かってるはずだよ。
じゃあ明日もよろしく。お疲れさま!」
下手に優しく慰める訳でもなくただ淡々と話し、ユウキは更衣室へ消えて行った。
“明日もよろしく”
何気ない一言かもしれないけれど、私はその優しさに救われる思いがした。
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