初めての…

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初めての…

あれから数日経った、付き合い始めて半月ちょっと経った頃のお台場デートでのこと。 「マグカップ?」 ふらっと立ち寄ったショップで、ユウキはマグカップを手に取る私に聞いてきた。 「お気に入りのを割っちゃって。これならかわいいしサイズもちょうどいいんだよね。買っちゃおうかな」 「ふーん、そうなんだ。かわいいじゃん」 そう言いながら、一緒にマグカップを見始めた。 優柔不断な私は “やっぱりこっちかな” “こっちもかわいいな”…… ひとつひとつ手に取って迷っていると 「あのさ…ウチにも置いておく?」 ユウキはボソっと言った。 ユウキの実家は大学まで通える距離だけど、両親に『大学から近いところに住みたい』と言ったらすんなり許可が下りたらしく、三年生になった頃から一人暮らしを始めていた。 「ユウキくん家に?」 「そのうちウチに来ることもあるだろ?…あ、いや、その…来るかもしれないじゃん?アヤがイヤじゃなければ……オレの部屋、最低限のものしかないし」 「あの、えーっと…」 そうだね!って言うのもガツガツ行き過ぎな感じだし、遠慮するのもまた違うような… 私が無言でコクっと頷くと 「じゃあこれでいい?」 「うん」 ユウキは私が選んだマグカップと、その色違いを手に取ってレジに向かった。 マグカップもお揃い? ユウキの意外と女子なところに驚いたけど、そのマグカップを一緒に使うのを想像するだけでテンションが上がった。 “いつかユウキくんの部屋に行く日が来るのかな…” 男性の一人暮らしの部屋に行くなんて、前に近藤くんの家にユウキ、ユカ、私の3人で押しかけて鍋パーティーした時くらいしかない。 男性の、しかも好きな人の一人暮らしの部屋へ行くなんて、考えただけでドキドキした。 付き合い始めたばかりでまだキスもしていないくらいなのに、誘われて「行く!」なんて乗り気になったら軽い女だと思われないかな… 誘われた訳でもないのに、密かに悩む気の早い私だった。
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