§4

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 六月生まれだから、雨にちなんだ名前になったものだとばかり思っていた。でも片瀬に言われて、両親はそこにワインへの情熱も託してくれていたのかもしれない、と気付く。 「うん。いい名前だ」  片瀬は先ほどと同じ言葉を繰り返すと、ボトルを手に取って中身をふたつのグラスに等分に注ぎ分けた。雫の新たな発見を祝福するかのように、最後のひとしずくまで。  雫はそれを、ゆっくりと口元に運ぶ。  同じワインのはずなのに、その味わいは先ほどよりも豊潤さを増したような気がした。
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