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食べかけの自分の皿の上に葉をちょこんと乗せ、スマートフォンを取り出していそいそと写真を撮っている。
「ほらほら、イ●スタ映え~」
「いや稲村さん、食べかけはないでしょ」
「お前ら、遊んでないでさっさと食え。今日は土曜日だから忙しいぞ」
皿を持って立ち上がる長谷川に促され、雫は慌ててポークソテーの残りを平らげる。まかないの皿洗いは雫の役目だ。言いつけられたからではなく、他にいくらでも仕事のある二人の負担を少しでも減らせるように、自分にできることは率先してやるようにしている。
「シズ君、週末は初めてだったね」
シンクまで自分の皿を下げに来た稲村が、さりげなく声をかけてくる。
「はい。やっぱり忙しいですか?」
「うーん、というより、平日とは客層も人の流れも違う感じかな。いつもより少し早い時間帯に一度ピークが来たり、閉店直前にも何組かお客さん入ったり」
「なるほど」
通常は十一時閉店の「夜の猫」だが、土曜日だけは一時間延長して午前零時まで営業している。
「閉店までいてもらって大丈夫かな」
「ああ、はい。その点は、おかげさまで」
「そっか。犀利さんちに下宿中なんだっけ。なら心配いらないね」
そうなのだ。
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