§5

4/6
503人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
 食べかけの自分の皿の上に葉をちょこんと乗せ、スマートフォンを取り出していそいそと写真を撮っている。 「ほらほら、イ●スタ映え~」 「いや稲村さん、食べかけはないでしょ」 「お前ら、遊んでないでさっさと食え。今日は土曜日だから忙しいぞ」  皿を持って立ち上がる長谷川に促され、雫は慌ててポークソテーの残りを平らげる。まかないの皿洗いは雫の役目だ。言いつけられたからではなく、他にいくらでも仕事のある二人の負担を少しでも減らせるように、自分にできることは率先してやるようにしている。 「シズ君、週末は初めてだったね」  シンクまで自分の皿を下げに来た稲村が、さりげなく声をかけてくる。 「はい。やっぱり忙しいですか?」 「うーん、というより、平日とは客層も人の流れも違う感じかな。いつもより少し早い時間帯に一度ピークが来たり、閉店直前にも何組かお客さん入ったり」 「なるほど」  通常は十一時閉店の「夜の猫」だが、土曜日だけは一時間延長して午前零時まで営業している。 「閉店までいてもらって大丈夫かな」 「ああ、はい。その点は、おかげさまで」 「そっか。犀利さんちに下宿中なんだっけ。なら心配いらないね」  そうなのだ。     
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!