§8

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 寂しい、という感情は、両親を亡くしてからずっと封印してきた。それを認めてしまったら、いつも使い捨てでしかない自分が惨めになるような気がして怖かった。仕事で長続きする人間関係を築けなくても、それがどうした、と強がってここまでやってきた。  それを、あの人にはあっさり見破られてしまったのだ。  雫はふらふらと立ち上がると、そのままベッドの上に倒れ込んだ。抱き寄せてきた腕の記憶をなぞり返すように、枕をぎゅっと掴んで、その中に顔を埋める。  気の迷いでもイタズラでもいい。一度きりでそのまま捨てられることになっても構わないから、あのまま身を委ねてしまいたかった。  そんなことを思っている自分が、ひどく汚らしい生き物に思えてくる。  片瀬は悪くない。確かに、誘っていたのは自分の方だ。  鼓動を強く打ちすぎて、心臓が痛んだ。
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