§4

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 バスルームも豪華にリフォーム済みだった。楕円形の浴槽はジャグジー付きで、その横にはすりガラスの出窓が切ってあり、解放感がある。洗った身体を湯船に沈めると、立ち仕事の疲れが泡と共に心地よく溶けていく。  パジャマの上にこれだけは自前のカーディガンを羽織って脱衣所を出る。家の中はがらんと静かだ。一人暮らしと言っていたのは本当らしい。部屋に戻る前に一声かけるべきだろうと、廊下を進んで片瀬の姿を探す。  中庭のところでトの字型に分かれている廊下を右に曲がれば雫が泊っている部屋で、真っ直ぐ行けば玄関だ。その手前の引き戸の、縦長に嵌ったガラスから灯りが漏れている。  中は二十畳近い広さのLDKだった。欧米サイズの革張りのソファが小さく見えるほどだ。しかし家主の姿はそこにはなく、奥のダイニングテーブルの手前に広い背中が見える。 「オーナー」  そっと声をかけると、片瀬が振り向いた。 「どうした。一人で寝つけないか?」  子供相手のようなことを言われてかちんときたが、それ以上にテーブルの上の様子が気になった。 「テイスティングですか」     
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