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大広間に響く、俺の大声。うわ、やっちゃった!と思った時には遅かった。一瞬、シンと時が止まって。彼女はと言うと、赤面して硬直していた。
そして、消え入るような小さな声で呟く。
「…よ、喜んで」
次の瞬間、ワッ!と周りが叫び出す。どこからか同期やら先輩やらが飛んできて、俺に抱きついてきた。まるで、サッカーのワールドカップで決勝点を決めたみたいに。
朝比奈の所にも、佐倉を含め、仲の良い女性社員が群がって来ていた。仲居さん達も総出で拍手してくれている。
「何で今?何で今なの?」
佐野が突っ込んで来たので、「昇進したらプロポーズしようと思ってたから、思わず」って返したら、その辺りに居た同僚達に大笑いされた。
「キスでもする?」
お酒も入っているので、誰かが野次を飛ばす。するとそこから大学生ノリみたいにキスコールが湧き起こって。突き飛ばされるみたいにして、彼女が俺の前にやって来た。明らかに困った顔をしている。
「ね、ホントにしたりしないよね…?」
そんな事を本気で訊いてくるから、吹き出して笑ってしまった。なので、彼女にしか聞こえないトーンで返す。
「…俺とキスしてるの見られるの、そんなに嫌?」
「そ、そうじゃないけど…!」
「どうせ結婚式で見られるんだから。一緒だろ?」
えっ、と戸惑う彼女の腰を引き寄せて。
「愛してる、」
全社員の注目が集まる中、その困惑した唇にキスをした。
【つづく】
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