12866人が本棚に入れています
本棚に追加
「…着眼点は良い。ただもう少し具体的に…そうだな、例えばここ、」
13時になると、魔王のデスクは大行列だった。それぞれコンペ用の企画書を持って、直前までペンを入れて修正している。そして今、私の目の前にいる女性社員の企画書に、魔王が指摘出しをしているところだった。
そして、私の番になる。
「よろしく、お願いします」
「…」
無言で受け取った魔王は、数枚の企画書をもの凄い速さでめくった。本当に読んでる?と疑いたくなるくらい。そして言い放った。
「全ッ然、ダメだな」
「えっ!」
思わず、声をあげる。だって、
「昨日のご指摘は全て網羅しました!」
さっきのさっきまで、パソコンの画面とにらめっこをして。昨日言われたところは完璧に修正して。なんならプラスアルファで乗っけたくらいの仕上がりなのに。
「…確かに、指摘したところは直ってる」
「じゃあ、何で…」
「君の企画書からは、景色が見えない」
「…景色?」
訳がわからなかった。一体どういう意味だ…?
「小手先でやっているのが見え見えだ。ゴールがブレてる」
「…ゴール、」
「それを見失ったら、どんなに面白い企画も通らない。この前のもそうだ、」
魔王が言ってるのは、この前ボツにされた企画のこと。それとコレは同じ原因でダメということ…?
「一体どういう意味ですか?具体的に…、」
教えて下さい、と懇願しようとしたが、
「君は主任だろ?それくらい自分で考えなさい」
とピシャリと言われて。「次」と目を逸らされた。
最初のコメントを投稿しよう!