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「どっ、どこがですか?私の企画書だけ、いつも突っぱねるじゃないですか…!」
「あれは、もう少し出来るクセに手を抜いてるからだよ。君は頭が良いから、小手先で仕事をこなす癖がある。さっきも言ったけど」
そんな事を言われても、自分では手を抜いているつもりは無い。いつも、出来る限りのことをしているのに。
「身に覚えがない?じゃあ、この前の化粧品の企画書。君はアレを提出する日、同期の朝比奈君と結城君と飲みに行く約束をしていた…よな?」
「…はい、」
「君はどうしても定時に帰りたかった。時間がある日なら、最終確認をして提出をするのに、あの日はほぼ通っているという俺の言葉を鵜呑みにして、そのまま提出した…違う?」
部長の言う通りだった。どうせ通るからと思って、さして確認もせずに出してしまったのだ。
「ところがあの企画、直前でクライアントから予算の減額を依頼されてたんだ。君はそれを確認し漏れていたから、修正せずに出した。これが君の企画をボツにした理由、」
「そ、そんな…」
今の今まで、予算の減額なんて知らなかった。なのに私は昨日の朝、部長を問い詰めてしまった。
「も、申し訳ありません…」
「…俺だって、君に辛く当たりたい訳じゃない。そこは分かっててくれ、」
一気にコーヒーを飲み干して、立ち上がる魔王。空き缶をゴミ箱に捨てた。
「やれば出来るのは分かってるから、もう少し頑張りなさい」
「あの、出来れば、もう少しヒントを…!」
すると魔王は、わざとらしく「うーん」と唸った。
「そうだな…君は、誰のために企画してる?」
「えっ、」
「それがゴール、」
それだけ言い残して、魔王は事務所に戻った。
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