部長と私★

14/32
前へ
/374ページ
次へ
ーーー誰のために企画してる? デスクに向かって、ずっと考え込んでいた。 そんなこと言われても、いつも企画を通すために必死だ。今も、何とかしてコンぺで選ばれたいという気持ちでいっぱいで。誰かのために、なんて考えている余裕はない。 「っだーもう!」 頭を抱えて突っ伏すと、上から笑い声が降ってきた。 「おうおう、煮詰まってんなあ、」 その呑気な声の主は結城だった。 「なに?冷やかしならもういいんだけど、」 「違ェよ、打ち上げ兼ねた同期会、今週末になったからな、」 「何で今週末?来週じゃなかったの?」 「製作がヤバイらしくてさ。来週は帰れないかもだから、今週にしてってよ、」 「ああーっそう、分かりましたよ」 不機嫌そうに返事して、企画書に目を落とす。と、それをヒラリと奪われた。 「なっ、ちょっ、返してよっ!」 「まあ待て。俺のフラットな視点から意見を述べてやるよ、」 「…アンタに分かんの?」 得意気な彼に嫌味を言ったけど、意外にも的を射た意見か返ってきた。 「…コレ、参加者は誰な訳?」 「えっ、」 「企画は面白いけどさ、誰かが参加してるイメージが湧かねえ、」 さっき、部長は「景色が見えない」と言った。きっとそれは、結城が言っていることと同義だ。 「ぶ、部長が、誰のために企画してるか考えろって言ってたんだけど…」 「ああ、さすが巽さん!言ってること分かるわ!」 「な、何で?何で分かるの?」 すると結城は更に得意気になって、企画書を返してきた。 「俺、運営部だから。そのイベントに参加してるお客さんを、一番近くで見てるからな。そういうの考えた方が良いんじゃね?」 「…難しいな、」 「コンセプトは、2人で美味しい、なんだろ?だったら、お前が誰と参加したいか考えてみたら?」 「誰と…、」 「俺、部長になれるかも?」なんて。鼻歌混じりに、結城は自分のデスクに戻った。
/374ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12867人が本棚に入れています
本棚に追加