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部長になれるかは知らないけど、大ヒントをもらった気がする。
ーーー誰と参加したいか考えてみたら?
そう言われて、何故か頭に浮かんだのは魔王だった。蘇ってきたクシャクシャの笑顔を、慌てて頭から追い出す。
な、何で部長?大切な人と過ごす、的なイベントで、何で魔王を連想するかなあ?
だけど考えてみれば、今までの企画書は、部長に認めてもらいたくて書いていた。だから、前の企画書も、部長からゴーサインが出たから満足してしまって。その後は放ったらかしになっていた。あの日、飲みに行く約束をしていなかったとしても、きっと予算の減額なんて気がつかなかったと思う。
この企画書は、通れば実際にイベントとして開催される。つまり、一般のお客さんが遊びに来てくれるということだ。企画書ベースではなく、イベントベースで、お客さんの反応まで想定しなくてはいけない。
そこまで、考えが回っていなかった。
「…私が、参加するなら、」
バレンタインなんて、私からすれば今や無縁の行事だ。だけど例えば、部長にチョコを渡すとしたら?
「義理だけどね、あくまでも義理、」
そう言い聞かせながらも胸がドキドキして、あっという間に企画書は完成した。
次の日の朝イチで、魔王にそれを見せに行った。すると「どういう心境の変化?」と驚かれて。「良い出来だ」と褒められたから、飛び跳ねたくなるくらい嬉しかった。
そして頭の片隅で、少しだけ自覚し始めた。部長を目の敵にしていたのは私だ。どうしても認めて欲しかったから。それは、嫌いとは逆の感情かもしれない、と。
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