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「クッソぉ、腹立つ!あの冷酷非道の魔王め!」
「まあまあ、それはアンタの落ち度じゃん。巽部長は悪くないよ、」
事務所の外、カフェスペースにて。私はコーヒーの缶を握りしめて、愚痴をこぼしていた。
彼女は、同期で製作部の朝比奈。いつも私のくだらない話を聞いてくれる。彼女が居なければ、私はストレスフルでとっくにこの仕事を辞めていたはずだ。
「私の落ち度だから余計に腹が立つのよ、」
「はあ?」
「何も言い返せないのがムカつく!完璧なのがムカつく!」
「…ま、あの若さで部長で、しかもあのルックスじゃね。非の打ち所がないわ、」
朝比奈の言う通り、彼は私と10歳も歳が離れていないはず。30代前半にして部長まで上り詰め、さらに見た目が優れている。部長のことをあまり好きではない私から見ても、かなり優れていると思う。甘いマスクでクールに仕事をこなすから、女性社員の心を鷲掴みにしていた。彼が普段見せない笑顔を見たいと、アプローチに励む人も少なくはない。
だけどその人気とは裏腹に、結婚もせず浮ついた噂1つない。なので最近では、ゲイなのではないか?という疑いまでかかり始めている。
「くぁー、ムカつくぅー!」
「あの巽部長に食ってかかるのもアンタくらいだよね、尊敬するわ」
「あれを超える企画出して、あの涼しい顔をヒィヒィ言わせてやるぅ!」
「その顔やめな、綺麗な顔が台無し」
「別に綺麗じゃないですぅー」
「綺麗だよ、黙ってたらね」
「…一言多くない?」
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