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【特別編】旦那と私★
「係長って!悔しい!」
宴会場の隅で、同期が全員集結していた。
「しかもなに?あの少女漫画みたいなプロポーズ!イケメンみたいなキス!唯って呼んでるの知らなかった~!」
バンバン、と畳を叩いて興奮する私を、渦中の男が宥める。
「…酔ってるだろ、もうやめとけ」
さっき、この男は見事にプロポーズを決めた。全社員の目の前で、彼女の腰を引き寄せて、少し首を傾けて、ドラマのワンシーンみたいなキスまでかまして。宴会場は大盛り上がりだった。
私の部下に、結城のことを好きだとか気になるとか言う子がチラホラ居た。こんなスケベ男のどこが良いの?なんて思ってたけど、確かにアレはちょっと格好良かった。きっと、キメるところはキメるタイプなんだ、コイツは。
「いつから結婚しようと思ってたの?」
「会社ではドライにしてるくせに、意外とラブラブだったんだな!」
冷やかされて、頬を染めて結城の陰に隠れる朝比奈が新鮮だった。清楚で綺麗だとは思ってたけど、そんな女の子っぽい彼女を見た事が無い。
「2人で居るとき、どんな話すんの?」
「同棲してるって聞いた時もビックリしたもんな、」
あまりにもずっと2人の話題だったので、耐えかねたのか、彼女は立ち上がった。
「さ、先、部屋戻ってる…!」
そう言う彼女に、結城が鍵を差し出した。
「先、寝てて良いから。俺のこと気にすんな」
「う、うん…」
そのやり取りを見て、同期全員が違和感を覚えた。結城も朝比奈も、それぞれ別の大部屋で雑魚寝のハズ。
「ね、何で、部屋の鍵…?」
すると結城が平然と「中村係長が代わってくれた」と答えた。逃げるように立ち去る朝比奈。私達は結城に詰め寄った。
「えっ、どう言うこと?」
「いや、ご好意で…別の部屋なのも可哀想だからって…断ったけど押し付けられたから…」
「何それ!」
「お前も一緒に戻れよ!」
だけど結城は「昨日したから大丈夫」なんて返事して、言った後に「しまった」という顔をした。
「昨日…?」
「昨日、お前、大部屋に居たよな?」
「朝比奈も居たよ!」
「えっ、いつしたの?」
「吐け!コラ、吐け!」
「痛ッ、痛テテテ…!」
羽交い締めにされて、結城の事情聴取が始まった。
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