12867人が本棚に入れています
本棚に追加
この部屋で目を覚ましたのは2回目だけど、明らかに心境が違っていた。1回目はただただパニックだったけど、今は幸福感と程よい倦怠感に包まれている。
「…おはよう、」
身を起こすと、大きな窓際のテーブルで、部長がコーヒーを飲んでいた。下された前髪、ラフな部屋着。そして、柔らかな笑顔。プライベート感満載で、心臓がこれでもかとキュンキュンと音を立てた。
「君も飲む?コーヒー、」
「…いや、今は大丈夫です、」
「そう、」
昨日は名前で呼んでくれたのにな、と少し胸を痛める。
そう言えば、私達、お互いの気持ちは確認したけど、付き合うって事で良いのかな…?
布団にくるまりながら、グルグル考えを巡らせる。と、部長がいつもの無表情に戻っていた。
「…前の会社に居た時、部下と付き合ってたんだ。もう10年近く前の話だけど、」
突然、なんの話かと思った。そう言えばこの前、仕事に影響が出るから自粛してると言っていた。それに関係する話だろうか?
「きっかけは、酔って手を出してしまった事で、」
「え、」
「俺も若かったから…まあそれは言い訳にならないけど、」
想像だに出来ないエピソードだった。今の部長なら、どんなに綺麗な人が裸で突撃しても、眉一つ動かさない。そんな冗談を、この前 同期の誰かが言っていた。
最初のコメントを投稿しよう!