12866人が本棚に入れています
本棚に追加
その日はマストの仕事が早々に終わっていたので、社内コンペの企画に取り掛かっていた。ここで是非、魔王をギャフンと言わせたい。そして魔王の発言に振り回される日々に終わりを告げたい。
集中してパソコンに向かっていると、頭の上に何かが降って来た。
「痛ッ、」
特に痛くもないけど、条件反射でそうリアクションしてしまった。見上げると、そこに居たのは端正な顔立ちのイケメン魔王。頭に乗っていたのは書類の束だった。
「そろそろ帰りなさい、」
辺りを見渡すと、もう私しか残って居なかった。それもそのはず。定時を1時間も回っている。
今まではサービス残業し放題だったのに、働き方改革やら何やらで、定時に無理やり帰らされるようになった。早く帰りたい人には良い改革だけど、仕事をもっとやりたい私からすれば、迷惑な話だ。
「すみません、すぐ帰ります、」
慌てて、データをUSBに移す。
「…持ち帰ってまでやるのか?そんな負担になるほどの仕事を振った覚えはないけど、」
「社内コンペの企画書です、次こそは私の企画で通しますから」
鞄にUSBを突っ込み、コートに手を掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!