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部長と私★
「どういうことですかッ!」
企画書を部長のデスクに叩きつける。こっちは怒り心頭で怒鳴っているのに、目の前の男は涼しい顔でパソコンのキーボードを叩いていた。
「この企画、ほぼ通ってるって仰ってましたよね?何で落とされたんですか?」
「…」
「聞いてます?巽部長!」
「…聞いてるよ、少し黙って、」
それでも彼は画面から目を離さなかった。腕を組んで、返事を待つ。
彼は、巽 静佳。私が勤めるイベント企画会社の、営業企画部の部長だ。その無駄のない仕事ぶりに、社内外から一目置かれている。だけど、私からすれば目の上のタンコブ。いつも、私の血と汗と涙の結晶である渾身の企画を、眉1つ動かさずに却下する。ちなみに今も、化粧品のPRイベントの企画がボツにされたところだ。
ちなみに私、佐倉 みのりは、26歳にして営業企画部の主任。自分で言うのも何だけど、若手のホープだ。同期の中でも役職があるのは私だけ。私が出した企画はクライアントにも喜ばれ、私指名の仕事が舞い込むこともしばしば。
なのに、この目の前の男は、やっとパソコンから目を離して言い放った。
「俺は、ほぼ、って言ったんだけど、」
「…は?」
「ほぼ、通ってるって言ったんだ。それで勝手に油断して、最後まで企画を詰めなかったのは君だろ?」
「なっ…」
「さあ、佐倉。この企画がボツになったのは誰の責任?俺?それとも君?」
「~~~…!」
叩き付けた企画書を回収して、席に戻る。彼はまた無言でパソコンに視線を戻した。
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