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第三章:父と娘
「そなたがこの首飾りを作ったのですか」
胸で燃えるように輝く朱雀を示して公主は静かに尋ねる。
「仰せの通りでございます」
傍らに杖を置いた、白髪の男は病身らしい痩せこけた肩を震わせながら答えた。
その後ろにひれ伏している、年の頃は公主と変わらぬ娘は案じる風に円らな大きい目を注いでいる。
「いや、図案を描いて材料を揃え、白玉を磨き上げたのは確かに私でございますが」
白髪の男はそこで苦いものを飲まされたように一瞬、蒼白い眉間に深い皺を走らせた。
「瑪瑙で朱雀を彫り上げたのはそこにいる娘でございます」
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