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 そして一人ぼそりと呟くと、再び文集のページをぺらぺらとめくり、ある人物の作文のページを開いた。  それは、四年生の『若本 雫』という子が書いた、『くやしかったマラソン大会』というタイトルの作文。  そこにはマラソン大会で二位だった悔しい経験についてが書かれていて、引き込まれるような巧みな文章で、全校生徒の作文の中で私は一番良かったと思った。  私はもう一度、印刷された文字の『若本 雫』に目をやる。  知らない名前だった。  もちろん、顔も思い浮かばない。  でも、マラソンで二位になるほどの脚力の持ち主なのだから、なんとなくガタイのいい女子プロレスラーみたいな姿を想像する。  こんないい作文を書く子なのだから、いつか縁があって会えるといいな、と思った。
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