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伊達にFPSゲームでポジショニングを鍛えちゃあ居ないんだ。
脱兎の如く、すみやかに包囲網から抜け出した。
「こら、待ちなさい!」
制止を無視して駆け続けた。
信号を渡り、階段を飛び降り、路地裏を縫うようにして進む。
だが、そうまでしても追っ手を撒くことが出来なかった。
連中は異常な程の追跡能力を発揮し、やや離れた後方よりピッタリと着いてくる。
「クソッ。足にはちょっと自信あったのに……!」
それからも延々と逃走劇を繰り広げたが、やはり逃げきる事は叶わなかった。
こうなれば屋内に逃げ込むしかない。
そう思うなり群衆に紛れつつ、とある建物へと突入した。
『当タワーは、国内でも……級の……タワーで……』
機械音声による館内アナウンスが、掠れ気味に聞こえてくる。
だが、じっくり耳を傾けている場合じゃない。
階下には追跡を続ける警官の姿が見えたからだ。
今はともかく上へ。
ひたすらに上を目指して進んでいった。
息も絶え絶え登る事しばし。
やがて、オレは塔の天辺まで辿り着いたのだ。
「ハッハッハ! どうだ! さすがにここまでは追って来れまい!」
ここは展望台などではない。
文字通りの最高点、ツリーの頭にピョコッと突き出している、鉄の棒らしき物にしがみついているのだ。
辺りは宵闇。
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