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眼下には寒々しい夜景が広がっている。
街明かりは眩しく、それが途方もなく遠くに感じられた。
「お前ら、幸せか! 明るい家庭を築いて、オレに見せびらかせて、それがそんなにも楽しいかッ!」
強風に言葉がさらわれ、空の彼方へと消えていく。
その様が無性に腹立たしくて、内臓の奥深くから、喉を枯らすほどの声が飛び出した。
「寒すぎんだよ! 誰でも良いから、ぬくもりをくれよぉーーッ!」
その時だ。
反動をつけて叫んだのがマズかったようだ。
バランスを崩して足が滑った。
「うわぁーーッ!?」
体がまっ逆さまになり、墜落していく。
羨望の眼差しを向けた夜景が近づいてくる。
死ぬ。
間違いなく死ぬ!
分かりきった事を再認識した、その時だ。
背中に衝撃が走り、しばらく息が止まる。
だが、それだけだ。
地面に落下した割にダメージが弱すぎた。
恐る恐る足元を見てみると……。
「う、浮いてる!?」
オレが、じゃない。
ドローンだ。
エチゼンクラゲのように巨大なドローンが、オレの窮地を救ってくれたのだ。
それからは機体と共に無事着地。
待ち受けていた警官にしこたま叱られ、呼び出しを食らった親父からは鉄拳制裁され、その日は終わった。
だが、オレの野望は、そこで終わらなかった。
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