自由研究

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「はい、じゃあ自由研究を後ろから集めてー。 大きくて提出できないのは後で自分で先生のところに持ってきてー。」  担任の声に呼応するように、元気のいい返事達が三年二組の教室内に響く。 夏休みを終えて再会する子どもたちはみな、小気味よく日やけしている。 昔ほど黒い子がいないのは時代のせいだろう。きちんと保護者が紫外線ケアをしている証拠だ。  提出物が集められている間、ほとんどの子はさっぱりとした顔をしているものの、何人かの子は憂鬱そうな顔をしている。その様子を見た担任はこう思う。 ーーおそらく終わっていないのだろう。 しかし、その子らよりも担任の心の中はひどく憂鬱であった。  自由研究とは名ばかりで、最近はほとんどの子がインターネットの宿題サイトで調べたものを丸写しにしてくる。せめて後ろめたさでも感じていてくれればいいが、まったく平然としていられるのだから、これほど無意味なものはない。  徐々に集められるものに担任はさっと目を通してみる。ノート形式、模造紙形式、フォーマットはいくつかあれど、思ったとおり宿題サイトに載っているものばかり。これらの内容にコメントを着けて返却する事を考えるとめまいがする。 ーーいったい何を褒めればいいのか。  担任の頭に職員室での苦行がよぎった。
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