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見事な程に、公園内には誰もいなかった。
まぁ、今が夜中の2時だっていうのものあるんだけど。
義明は煙草の灰を持ってきていた携帯灰皿に落としながら、目を細めていた。
フェンスに指をかけて、じっと夜景を見つめている。
広がる光の群れに一体何を思っているんだろう。
義明に記念日なんていう概念は存在していなくて、正月だろうが盆だろうが祭りだろうが「ただの日」という認識しかないのだと言っていた。
テレビやネットでそういう記念日を騒ぎ立てる報道をするのを目にする度に、面倒臭そうな理解出来ないような顔をしていた。
そうしてそれはクリスマスイブである今日(もう日付が変わったからクリスマスか)も例外ではないわけで。
義明のことだし、色んな人からお誘いがかかっているだろうと、昨日の俺は半ば諦めていた。
大学の仲間でクリスマスパーティーなんていう嬉しいお誘いがなかったわけでもないんだけど、心のどこかで期待していたんだと思う。
義明と一緒にこの日を過ごせたらいいって。
俺と義明は付き合っているわけじゃない。
俺と義明はとても歪で、深くて、でも決して恋人同士なんていう甘い甘いもんじゃない。
なんとも言えないそんな関係だけど、でも、人間同士の結びつきなのは間違いないわけで。
俺は義明の後ろまで移動すると、フェンスと自分の間に義明を挟み込むように体重をかけて、さらさらと黒髪が流れる首元に顔を埋めた。
義明の目が一度見開かれた気がした。
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