何でもない日、メリークリスマス/幸太郎視点

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「…寒ィ」 バレバレな口実を口にする自分に自分で笑えて来る。 そのまま義明の両腕の外から腕を突き出しフェンスに指をかける。 逃げられなくなった義明が、面倒臭そうに溜息をついて煙草を携帯灰皿に押し込んだ。 居心地が悪いのか、俺の腕の中でもぞもぞと身じろいでいる。 ぐっと俺が前に体重を掛けると、がしゃんと金属が軋む音がして、いよいよ義明の逃げ場はなくなった。 「動けない」 俺の頭のすぐ横で、低い機嫌の悪そうな声が聞こえる。 俺は義明の首元に顔を埋めたまま、思わずくつくつと笑ってしまった。 義明をサンドイッチしながら上半身が笑いでぷるぷる揺れる。 「動けなくしてんだよ」 挑発的に答えれば、明らかに俺に聞こえるように舌打ちをされた。 「いいだろ、少しくらい。…たまにはさ」 義明の耳元に唇を寄せて甘えた声を出すと、義明はひくんと体を揺らしてそのまま抗うことを諦めたようだった。 そのままそっと舌先を伸ばして耳朶を舐める。 ちゅっと水音を立てると、義明の唇から短い息が漏れた。 そうしてそのまま義明を強く抱き締めた。 「ねぇ、何で今日俺を誘ってくれたの」 聞くだけ無駄な質問を投げかける。 「ただの気まぐれだ」 「だよな、知ってた」 …本当、知ってた。 「わかっているなら聞くな」 「うん」 それなのに、聞いてみたくなる時ってあるんだよ。 腕の中の義明がもう一度居心地悪そうに身じろいだので、俺は義明が逃げられるようにそっと腕の力を緩めた。 義明の体が半回転して、俺の方に向き直る。 そのまま俺の首に両腕がするりとしなやかな猫のように絡みついて、気づいた時には唇を唇で塞がれていた。 頭の後ろに回って来た手が俺の頭を固定して、逃げ場のない深い口づけを迫られる。 義明の長い睫毛が俺の頬をくすぐった。
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