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酸素を求めて口を離す。
蕩けそうな頭で目の前の赤茶の虹彩を見つめると、その瞳はやわらかい色をしていた。
もう一度ねだろうと目を瞑ろうとした時、がさりと俺の唇を紙の感触が襲った。
「え?」
思わず目を開ける。
焦点があった視界が捉えたのは、俺と義明の顔の間にある小綺麗な包装紙だった。
「何、これ」
状況が理解出来なくて俺は目をぱちくりと瞬かせる。
義明の手に握られた小綺麗な黒い包装紙。
義明が顎で受け取るように促すので、おずおずと受け取ってその中身を漁ると、袋から出て来たのはトライバル柄のシルバーのループピアスだった。
「あ、え、ピ、アス?」
脳と体の連動が唐突に切れて上手く言葉が出てこない。
義明が頷く仕草をしたのを確認できた。
「お、俺に?」
金魚みたいに口をぱくぱくさせて、単語単語で紡ぐことしか出来ない。
「…え、義明が…俺に?」
現状を理解して、瞬時に足の指先から脳天までを沸騰した血が駆け巡っていく。
「お前にはいつも、迷惑ばかりかけているから」
たまにはな、と。ぼそぼそと聞き取りづらい消え入りそうな声が続いた。
ふいっと横を向いてしまった義明の耳が、うっすらと赤く染まっているように見えた。
いま付けているスタッズピアスを外してポケットに突っ込み、包装されていたピアスを取り出して早速右耳につけてみる。銀独特の重さがある、しっかりとした着け心地だった。
「なぁ、似合う?」
再びフェンスと向き合ってしまった義明に俺は問いかける。
義明は俺をちらっと見ると、嗚呼はいはいと適当な相槌を打って手を顔の横でひらひらと振った。
公園の暗い照明だと良くわからないが、目元まで薄っすら赤い気がした。
俺は込み上げてくる感情をコントロール出来なくて、またフェンスと自分の間で義明を押し潰した。
金属が軋む音がして、さっきよりも義明がフェンスにめり込んだのが分かった。
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