卵焼きと告白

19/26
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
お弁当をほとんど食べ終わり、最後に残った卵焼きを口に放り込む。 「……あれ」 甘くない。 最初に頬張った、お砂糖の入った甘い卵焼きの味を想像していたのだが、それとは違う出汁の風味が広がった。 これ。甘さのないだし巻き卵だ。 「広瀬くん、卵焼き二種類いれたの?」 尋ねると、広瀬くんは照れたように苦笑しながらうなずいた。 「……日下部さんが、どっちの味が好みなのかわからなかったから」 「それでも、わざわざ二回焼くのは大変だったんじゃ……」 「そんなことないよ。せっかくだから………少しでも好きなものを食べてほしくて」 「広瀬くん……」 なんだろう。 これは広瀬くんの真面目さ? 優しさ? きっときっと、どちらにしても彼の長所なはずなのに。 少し……かなしい。 「私……私は、どっちも好きだよ。卵焼き。甘いのもしょっぱいのも」
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!