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「ふん、冗談ではないぞ」黒猫は手のひらを見せる。黒い肉球のうえで黒い玉が発生する。それは巨大な大きな玉へと膨張する。黒いそれは無数の矢となり飛び去り弾けて雨となる。すべてが白に染まった世界に黒い輪郭が吹き付けられていく。全てが元のあるべき姿へと縁取られる。
そこは日本家屋の屋敷のなかでテレビがあってコタツがあって、和室のリビングであった。
「世界が白に染まってもそこにはまだ面影を残す。だからこうやって黒く塗り直せばよいのだ。まああまりにも時間が立ったものはその輪郭を失い形は忘れられ元には戻せないがな。わたしが今この時ここにいて助かったな。正月だったら死んでたのぉ」
「なんで正月だと死ぬんだよ!?」ユージはツッコむ。
「何故ってわしゃいつも正月には実家に帰るからなぁ」
ばあちゃんが来る。
「おぅ、ユージとタツヤ。年越しそば食っていくか?」
出て来たばあちゃんはいつもの元気な様子。だがしかし白黒である。
「はい、いただきます」とユージはばあちゃんの前では行儀がいい。
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