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01 すべてを白に染めしもの
大魔王ナビオが討たれて早千年。
だがしかし世界に平和は訪れず、またひとつここに死闘がある。魔王と勇者の戦い。
そしていま! 繰り出されるは渾身の一撃! もはや満身創痍の英雄の最後の力を振り絞った一撃。掲げた剣が閃く。
敵は「おぞましき白の死神」と謳われた魔王。全身が白く輝く毛で覆われ、白い翼に長い耳、いびつに曲がった角を生やし、やせっぽっちの狼のような体躯。だが巨大な体。剥き出しの牙に鋭い爪。白い毛はまるで剣山のような刺々しさ。
だがいまその白い胸元は真っ赤に染まる。勇者の一撃が貫いたその胸に剣が突き刺さる。鮮血を流しているのだ。
吐息が聞こえる。聞くものを凍りつかせるような息。
魔王述べる。
「よもやこれまでか……」震える言葉。魂をも揺さぶる不思議な音色。「だがただではやられぬ。死なばもろとも……」
魔王は白い光に包まれる。それは辺りを白に染めていく。
全てを、世界を、白紙へと戻す。白のシは死のシ。空白は無。すべてを無へと帰する。すべてを白に染めていく。
逃げる勇者と一行。勇者の弟の僧侶は肝心なところでポカをやる。どんくさい。そういままさにそれだ。コケたのだ。
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