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「...は?最近アイツが提出してきた企画なんて全部却下しとるはず...やけど?」
いよねぇは、そう呟いた瞬間目にも止まらぬ速さでポケットからスマホを取り出しすぐさま通話ボタンを押す。
PLLLLL...
PLLLLL...
「...くっそ!絶対シカトこかれとる!」
相手は出なかったのか、いよねぇは軽快な舌打ちをした後、通話終了ボタンを押して荒い動作で椅子の背もたれに全力でもたれかかる。
「あーあ!せいちゃんどんまいっ♪」
まるで他人事のような私の声に、いよねぇは大袈裟にため息をつく。
そしてゆっくりと立ち上がり、彼女の背中側にある窓ガラスへと歩み寄って眼下のグラウンドを見つめながらまたスマホを操作する。
「あーもう!うちじゃあかんってことやな...?」
そう呟きながら、誰かへと連絡しているようだった。
その相手に心当たりがあり、私はんふふー!と自分の机に肘を立てて事の行先を見守っていた。
ガラッ
私の背後、放送部部室のドアが開いたので振り返り入室者を確認する。
「あっ馨ちゃん!」
馨ちゃんは静かに扉を閉めて、落ち着いた足取りでこちらに近づいてくる。
どうしたのか、と首をかしげて彼女の第一声を待つと、要件は私のようで。
困った顔で彼女は告げる。
「しおー...小川先生から伝言もらったんけど...明日の2-Aの現国、自習になるって」
「うっそ!またしおの仕事増えた!いやーもう!せいちゃんのせいだーー!」
容赦なく突きつけられる仕事達にお手上げ状態の私は、机に突っ伏して、うわーん!とわざとらしい泣き真似をする。
「うちも手伝うからさ?..元気だして?ほら頑張ろ??」
ぽんぽん、と肩に手を置かれ天使のような囁きに、これまたわざとらしく振り返り、目の前の馨ちゃんの腰に抱きつく。
「わーんありがとーー!一緒に帰ろーねー!」
「うんうん、今日はぽぽ、おうちのお手伝いらしいっちゃんね、いいよー?一緒に帰ろ?」
軽く遠回しに彼女の優先順位をばぁん!と告げられた気がするけど馨ちゃんの大切なんて周知の事実だし馨ちゃんはきっと悪気なんてゼロで思わず天然で口に出してしまっただけだろうしええいっそんなことはどうだっていい。
ひとまず私は彼女の好意に、ありがとぉおお、と情けない声を出し、抱きついたままそのお腹にすりすりしたのだった。
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