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例えば3年のあつにぃ。
彼の間の伸びた博多弁の話口調は女子生徒から大人気で。
しかし彼が昼放送を任された時は、もうルールも何もあったもんじゃない。
お便りを気まぐれに読んだり、ただ歌を口ずさんだり、場合によっては部員の誰かに電話がかかってきてスピーカー通話により会話を放送させられる。
そんなあつにぃでも、最高学年ということもあって副部長を任せられているし、ファンクラブの人数も凄い。
...ま、僕の方が多いらしいけど。
わずか5分の間におにぎりやサンドイッチなど、簡単に食べられるようなものを買っておいた僕達は、少し急いで胃に入れる。
「ん…っせいちゃん、あと2分っ」
「ふぁいひょ!(はいよ!)」
慌てて口の中のおにぎりを飲み込むせいちゃんを横目に、機材の前に座って準備を進める。
食べ終わったせいちゃんが僕の隣の椅子に腰掛け、バサバサとプリントを何枚かかき集め並べていく。
「いくよ?」
「おっけー!」
合図とともに、放送マイクのスイッチをオンにした。
「みなさんこんにちは!お昼の放送です。放送部より、本日はせいゆたでお送りしm
「アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓!!!!!!!!」
「えっ、うるっさ!!!バカか!!!!」
前触れもなく叫び出すせいちゃんに、校内中のスピーカーがハウリング音を発する。
同時刻、放送室には届いていないが各教室から悲鳴と笑い声が聞こえていた。
「やって、昨日ラジオでさー開口一番アサヒスーパードライやってくださいって言われててん」
「誰やそんなリクエストしたやつ!!」
「西中先生」
「せんせぇ!!?」
大した事なんて話さない。
僕達の日常。
『 くだらなくていい。』
それは部長のいよねぇがいつも言っている言葉だ。
僕達は、それだけを意識することを約束している。
「……はい、ということでそんな西中先生からのリクエスト曲をお送りします。」
選ばれて入ったこの部活だけど、とてもやりがいを感じていて、そして僕の日常の一部となっている。
「清水〇太で、君が好き」
マイクスイッチを切り、PC音源の方のスイッチをONにした。
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