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────もしも願いが叶うとしたら……
そんな事をふと思いながら夜に溺れ、今夜も知らない男と身体を重ねる。
「……願い……か」
「……は?」
「いや、なんでもない……」
それは叶う筈ないと分かっているからこそ願ってしまうのだろうか。
「……なぁ」
「あ?気持ちよくないの?」
男が俺を見下ろし口元が厭らしく歪む。
「い……ッ……いいよ、気持ちいい……違……くて」
くだらない問いかけを口にする寸前、代わりに男の腰に足を絡め引き寄せる。
「……ッ……違うってなんだよ」
「やっぱ……いいや……ッ」
身体を重ねて気持ちよくなって、その延長線上にそれ以上の気持ちは存在しない。
遊びだと割り切っているからこそ成り立っているのだから。
だから、抱く事に意味はない。
勿論、抱かれる事にも。
こうして知らない男と身体を重ね、伝わる熱に触れ、今夜も感じ、溺れ……またこの身体が汚れていく。
だからこそ、俺はアイツに触れてはいけない……
真っ直ぐで真っ白なアイツを汚してしまいそうだから……
だから、
触れたくても触れられない。
今夜もまた、吐息と共に消えた感情を引きずるように密やかに願う。
────もしも願いが叶うなら、俺は……
~アディクション・ルージュ~
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