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携帯が鳴っている。着信履歴を見ると、どれも同じ人物からだった。電話にでる気になれずに彼女はそのまま手にしたビールを煽った。
「はあ…。」
飲んでも飲んでも満たされない。忘れたいのに傷の痛みは薄れない。髪を掻き上げ、溜息を吐いた。ふと、棚に飾ってある写真に目が入った。それは、小さい頃に撮った家族写真だった。それをじっと見つめる。どれだけそうしていたか分からない。突然、インターホンが鳴った。とても出る気分じゃない。そのまま座り込んだままでいる彼女だったが
「おい!雫!いるんだろう!?」
ドンドン、と扉を強く叩く音がした。
「雫!いるのは分かってるんだ!早くここを開けろ!」
彼女は座り込んだままその場から動こうとしなかった。すると、鍵を回してガチャリ、と扉が開く音がした。
「雫!…うわ。何だこの部屋…、アルコール臭え…。」
部屋に入った男は呆れた顔で雫を見下ろした。彼は茶色の髪をぐしゃぐしゃと?き乱した。
「また、やけ酒か?お前って、嫌な事があったらすぐに酒に走るよな。」
「…。」
俯いたままの雫に男は溜息を吐いた。
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