ぬくもり喫茶モフリ

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もちろん追加オーダーも可能なのだが、1ハグ9800円と敷居が高いので、多くの客はリテイクを要求せずに帰っていく。 1万円札でお釣りのくる、このサービス。 割高だと思う者は少ないようで、客の満足度は上々。 独身貴族は毎週のように、既婚者は小遣いを健気に貯めて通うのだ。 とある日。 喫茶モフリに風変わりな客が訪れた。 結婚式帰りのように、全身に隙の無いスーツを着込んだ男だ。 これには店内の客も不審がり、その人物を脇目で追った。 まぁ客観的に見ると、老紳士に抱きしめられた妙齢の女性や、妖艶な美女に撫でられ格好を崩す老人も、それなりに不審であるのだが。 「和風と洋風、どちらになさいますか?」 「いえ、そのいずれでもありません」 男は柔らかく、しかし明確に断言をした。 これには看板娘も困り顔となる。 「ええと、中華ですかね? すみません、あれは夏季限定のサービスでして……」 「いえ、そういう事でもありません」 「あの、その、ではどのようなご用件でしょうか?」 「わかりました。こちらの意図をご説明します」 男はおもむろに内ポケットに手を伸ばし、懐から小さな箱を取り出した。 それを開くと、中には大きな石の付いた眩いリングが収まっていた。 「私はあなたの温もりが欲しい! 必ず幸せにしてみせますので、僕と結婚してください!」 店内がにわかに静かになる。     
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