冬の犬

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祠に張り付けてある案内板に由緒が書いてあったが、かなり色あせてしまっている。壬狛(みこま)神社という名だけが辛うじて読めた。 狛。狛犬。太古の白い獣。さっきの犬はこの神社の眷属なのだろう。 『玉城。お前まだ酷い霊感に悩まされてるのか? 現実の人間なのか幽霊なのかも分からんほどはっきり見えちゃ、辛いだろう』 友人は、玉城の昔からの悩みを知っていて、この神社を教えてくれた。壬狛神社にお参りしてから霊を見なくなったという人が何人もいたらしい。 玉城は財布から小銭を出すと、枯れ葉を取り除いて、賽銭箱に落とし込んだ。 柏手を打って、手を合せる。 ピンと張った冷たい空気の中、しばらく拝んでいると、目を閉じているにもかかわらず、自分の周囲に白い気配を感じた。何となく可笑しくなって目を開けたが、姿は見えない。
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