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プロローグ~私が死んだ日~
私──山田茉也は平平凡凡な大学生だった。
趣味と言えば、読書。小さい頃からファンタジー小説が大好きで毎日毎時間毎秒読んでいた。
将来の夢は魔法使いと豪語していた私は周りから「不思議ちゃん」扱いされる始末……。
でもそんなの気にしない。
変だと思われても、好きなものは好きなのだから。
……成長していくにつれ、そんな事は考えなくなった。
皆と同じようにしないと。就職も無難なものにしよう。
どうせ、やりたい事なんて、ないんだから──。
白黒の人生だった。色なんて鮮やかなものはない。
嬉しい事もない。むしろ悲しい事ばかりだ。
同じ大学、同じ苗字だった事がきっかけで仲が良かった友達もお風呂で溺れて亡くなってしまったし。
お父さんとお母さんはいないし。
引き取ってくれた叔父さんは仕事ばっかりで、いつも独り。
私は、今の孤独とお友達になった日々に沈んだまま、死ぬんだなって思ってた。
──そんなある日。
バイト帰りで夜中歩いて帰っていると、いつも通る公園に不審な影があった。
男の人は外灯の光が反射するナイフを持って、暴れる猫を片手に──。
私は思わず、叫んだ。
「──駄目!!!!」
一心不乱に走って、戸惑う男の人の腕を掴む。
目の前で、見殺しには到底できなかったのだ。
ナイフが鋭く私の瞳に映る。
男の人の動きがやけにスローモーションに見えて。
私は、その人に刺されて、死んだ。
──それが、私の……いや、エレナの物語の始まりだったのだ。
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