一. ナリーの話

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一. ナリーの話

一  そのお店は、薪を売っている。名前は“赤ずきんの薪売店”。店舗があるのは寂れた―いやそれはいいすぎであるが―人口の少ない村で、山を背にし店舗の前はただの煉瓦道となっている。 そんな店の主人の名はキナという。彼女はいつも、赤い頭巾をし、左肩に結んだ髪をのせて、前髪を右に流しヘアピンでしっかりとめて、金髪の下に蒼い目をのぞかせている。 薪の材料となる木は、店舗の裏にある山にあり、彼女は山と店舗の持ち主だ。だから薪の材料はそうすぐにはなくならない。それでも、あるルールがあった。  1日で売る薪は2本だけ。しかも、1人にしか売らない。そして、その“1人”を決めるのはキナではなく(えにし)ただひとつである。
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