180人が本棚に入れています
本棚に追加
常日頃、律の周りをうろちょろする隊員が気に入らないと言っていた。
今日いるのは來斗の親衛隊だが、彼らを使って鬱憤晴らしの遊びをすることに決めたようだ。
自分が構うことで注目を浴びせている姿に、流衣は思い切り舌打ちをしたくなる。
「はい行きましょー」
「あ、ちょっと……」
流衣の制止も聞かず、和雅は捕まえている隊員を引き摺って店の奥へと足を運んだ。
何事かと探ってくる大勢の視線に晒され、隊員は可哀相なくらい真っ青になっている。
仕方なく、流衣も固まったままの他の隊員を促し和雅の後を続いた。
「やっほーライちゃん。お客様放置しちゃダーメじゃん」
「あぁ?」
ドサリと掴んでいた隊員をソファに放り投げて和雅が笑う。
妙な呼び名で呼ばれ眉を寄せた來斗は顔を上げ、和雅が持ってきたものを一瞥した。
「あ?ユキいんじゃん。律は?」
「んだよ」
先に店に入ったはずの律がいつの間にか流衣達の背後に立っていた。
隊員が「ヒッ」と悲鳴をあげるのも気にせず、來斗達と向い合わせるになる席へ腰を下ろす。
「帰ってたんなら言えよ」
「前ここに忘れてったモン取り行ってたんだよ」
「悪いなカズ、律借りちゃって」
「うちの律さん借り出させるとか、高くつくよーユキちゃん」
「馬鹿かお前」
あの律が和雅に対してぞんざいな態度を取っている。
信じられない光景に隊員達は目を見開いて律を凝視した。
和雅に生意気な口をきくことなど、学校ではあり得ないことなのに。
「カズさん。こいつら何すか」
幸也の近くに座っている男が鋭い視線を送った。
和雅に転がされた隊員が逃げるように立ち上がり、流衣の後ろへと隠れる。
「オイオイあんま脅かしてやんな。藤宮副会長様の品格疑われんだろ」
「は?」
「副会長、様?」
「何それ」
和雅の言葉に周りがぽかんと呆ける。
「そこのチワワちゃん達は藤宮副会長様の親衛隊よー」
「しん……えい、たい……」
意味を飲み込むように誰かがぽつりと呟いた一拍後、男達の笑い声が爆発した。
「マジかよ、ホントにいんのか親衛隊って」
「つかライが副会長とかっ……」
「ありえねーっ」
「おー失礼だな。カズなんて会長だぞ」
「カズが!?終わってる!」
「何、じゃあカズさんにもいんの?シンエータイ」
「いるいる。キャンキャン煩いのがいっぱい」
「ぶっは、さすが全寮制ハンパねーっ」
最初のコメントを投稿しよう!