泣きたい位に残酷で

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笑いすぎて呼吸困難になっている奴、腹が痛いと悶絶している奴で店内がちょっとした地獄絵図になった。 ゲラゲラと笑い転げる男達に流衣は呆れた視線を送る。 後ろにいる隊員達は羞恥に震えているのだろう、流衣が手で抑えているが、触れた身体から怒りがありありと伝わってくる。 何故こんなに笑われなければならないのか。 誇りにすら思っていた親衛隊を、何故こんな馬鹿にされなければならないのか。 隊員達は理解が出来なかった。 煽るような言い方をする和雅も。 助けてくれない來斗も。 同じ立場の律や流衣でさえ、何も言わないなんて。 「っ――」 「その辺にしてあげて。この子達泣いちゃうから」 我慢できずに反論しようとした隊員を強く制した流衣が静かに口を開いた。 「ていうか、僕隊長だから。あんま部下を虐めないでくれる?」 「は、お前隊長なの?」 「さすが追っかけ。むしろコエーわ」 「何とでも。で、今日は憧れの副会長様の素顔が知りたくてこの子達来てるから、何か話してあげて」 努めて冷静に、半分泣いている隊員達を適当なところに座るよう促す。 「ライさんの素顔ねぇ……」 「ライの本性知りたいなら、女遍歴聞くのが早いんじゃねぇ?」 食べ物を持ってきた誰かが言えば、その場にいた男達があぁと頷いた。 また頭が痛くなる内容を、と流衣が溜息をつくも話はどんどん進んでいく。 「なら、一番知ってんのユキだろ」 「俺?」 「全員漏れなく、お前にいちゃもんつけてたじゃん」 「あぁ、んー……」 眉間に皺を寄せ、幸也が考え始めた。 当事者であるはずの來斗は我関せずを貫くつもりなのか、黙ったままグラスを傾けている。 「って言っても俺、ここ2年のことは知らないよ?」 「だぁからぁ、ユキちゃんがいない2年は拗ねてる期間だから誰もいなかったんだってば」 「そうそう。まんまユキに噛み付いてきた人数なのよ」 「……どの範囲をライ兄が恋人って認識してんのか分かんないけど、覚えてる限りだと一番長くて2週間かな」 「マジ?やべ、俺より長ぇ」 笑い混じりに和雅が焦った声を出す。 「そんな子いた?」 「うん、んでよく覚えてるよ俺。確かその人どっから頼んできたのかグループで俺に襲ってきたし」 「……は?」 「え?」 「……何だそれ」 聞き捨てならない言葉に、傍観を決め込んでいた來斗までも反応した。
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