泣きたい位に残酷で

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「鬱陶しくなるまでは引っ付いてきても放置して、うざったくなったら追い出すってのが正解だろ」 「それこそ日替わりだったよな。可愛い系から美人系までよりどりみどり」 それでも來斗を望む者は後を経たなかったから、「恋人」の座が空くことはほとんどなかった。 2年前までは。 「ライが飽きずに隣に置いてるのなんて、ユキちゃん位だろ」 「ライさん狙いの奴ら、みーんなユキを妬んでたしな」 ここにもいるし、と隣にいた奴から肘で突かれ、流衣の眉間に皺が寄った。 惨めになるだけの過去など思い出したくないのに、ここにいる連中にとっては恰好のネタになるのが腹立たしい。 それでも流衣が想っていたことなど、來斗は微塵も興味を示さない。 分かっているけど、改めて突きつけられる現実に奥から苦いものが込み上げてくる。 「ライが自分から構うのもユキだけだろ」 「っていうか、過保護なんだよ」 「ふらっといなくなったと思ったら傷つくって帰ってくるお前が悪い」 「別に大したことな……い、って!何すんだよっ」 丁度傷口のあたりを思い切り抓られたらしい、幸也が涙目になって來斗の手を払った。 そのままじゃれ合い始める2人を、しかしBlueMoon常連の者達にとっては慣れた光景なので、面白そうに笑っている。 親衛隊員達にとってはとても楽しめる話ではないけれど。 噂程度にしか知らなかった。 ただの作り話で、実際は違うのだとどこかで期待もしていた。 だって、考えられない。 学校での來斗はどこまでもストイックだったから。 喧嘩をしているなど、女遊びを繰返していたなど、想像もできなかった。 何より今目の前で、幸也とじゃれている來斗の瞳が見たこともない程優しい色をしていることに、絶望的な違いを突きつけられた気がした。 「けどさー、ユキが姿見せなくなってから誰もライに近づかなくなったよな」 「そうそう。ライさんもすっげ怖くてさ、俺近寄れなかった」 「2年前だよな。なんかあったの?」 「、あー……喧嘩、してた、かな」 歯切れ悪く幸也が乾いた笑いを漏らす。 「喧嘩であそこまで機嫌損ねさせるお前がすげーわ」 「ホントに喧嘩かよ」 「まぁ、うん……似たような感じ?いいじゃん、もう仲直りしてるし」 「そうなんすか?」 「まぁな」 肩を竦めた來斗もそれ以上言う気はないらしく、幸也の頭から手を離すと空いたグラスを持って立ち上がった。
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