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「次元が違う。あんた達が普段「制裁」だって言ってる虐めなんか話にならないの、ヘラヘラ笑って動かない人間いたぶるのとは訳が違うの。ユキの公開制裁見てたでしょ。ライとユキがどういう表情で、どういう殴り合いしてたか知ってるでしょ」
「虐めって自覚してたんだ」
「卑劣さで言ったら、親衛隊も同等だろ」
外野の揶揄を視線で黙らせ、流衣はもう一度隊員達を冷たく見据える。
何も言わないけれど、引き下がる気がさらさらないのは表情から読み取れた。
だれか1人でも尻込みすればいいものを。
全員が行きたいと雰囲気で訴えてくることに、流衣は隠しもせず思い切り舌打ちをした。
「っ――」
「連れてけばぁ?」
気の抜けた声がざわりと流衣の神経を逆撫でた。
ゆっくりと振り返り、ダルそうにこちらを見ている男を睨みつける。
「ギャラリーなんていつものことだし、どうせ店の奴等も野次馬すんだろ」
「……それで、何かあったらカズが責任取ってくれんの」
「はぁ?なんで俺が。見たきゃ勝手に見に来ればっつー話。来るかどうかはそいつの責任だろ」
「お前な……」
律が呆れた声を出すも、和雅はニヤニヤと流衣を挑発するように見てくるだけだ。
心底嫌なタイミングでここに来てしまったと、和雅から視線を逸らし溜息をつく。
背後の雰囲気が苛立ち始めているのは、隊員達の出方を待っているからだろう。
流衣が動かない以上、和雅は店を出て行く気はなさそうだ。
「…………僕は、あんたたちを守れない」
たっぷり間を置いて、重々しく流衣が呟いた。
「冗談じゃなく、僕は自分の身しか守れないから。だから、絶対、でしゃばるような真似しないで」
「隊長……」
「あんた達は部外者。いい?何があっても、1歩たりとも、余計なことしようとしないで」
「……、はい」
流衣の圧力にたじろぐも、隊員達はしっかりと頷いた。
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