ネオンの下のその人は

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その日の親衛隊ミーティングの議事録をチェックしていた流衣がふと顔を上げると、数人の隊員が真剣な面持ちで近づいてきた。 「……どうしたの」 「、隊長に、お願いがあります」 震える声を出す隊員に、またかと溜息をつく。 「ダメだって、言ったよね?先週も」 「でも、どうしても知りたいんです。隊長だけ知ってるなんて、ずるいですっ」 ずるいって何だと、流衣は呆れ返りたくなった。 知っていて当然だ。 危険を承知で、自分はあの世界に飛び込んだのだから。 温室で守られて生活しているだけのお前達と一緒にしないで欲しい。 「……あのとき見てたんでしょ?あれが藤宮様なの。藤宮來斗副会長の素の姿だよ」 「あ、んなの。全然見せてないじゃないですか。宮澤と殴り合っていただけだっ」 「じゃあ、それが事実でしょ」 「絶対違うっ」 「混乱しただけです、あんなの。藤宮様は一体何を隠しているんですかっ」 「何で隊長は、それをご存知なんですかっ」 煩いと一喝できればどんなに良いだろうか。 幸也と來斗の関係が露呈された頃から続く押し問答に、そろそろ諦めてくれるかと期待したのが馬鹿だった。 かれこれ3週間。 ここまでしつこく来られるとはちょっと想像していなかった。 甘やかされ、知らなければ気がすまないというお坊ちゃんを正直舐めていたと、流衣は己に舌打ちをしたくなった。 「……何でそんなに知りたいわけ?何にも面白くないのに」 「だって……僕達は親衛隊です、藤宮様の。藤宮様が快適に過ごされるよう日々懸命に奉仕をしているのに、僕達の知らない姿があるなんて納得できない」 「……何それ」 「っ、隊長は、知っているからそんな風に言えるんです。宮澤のことだって、僕達の知らないところで藤宮様と繋がりがあって、それだって、隊長はご存知だったんですよね?そんなの不公平ですっ僕達だって知る権利くらいあるはず――」 捲し立てるように詰め寄る隊員は、しかし流衣から吐き出された長く深い溜息にビクリと肩を揺らし言葉を切った。 「……これだから、学校が全てと思ってるボンボンって嫌いなんだよ」 流衣から呟かれた声は小さくて聞き取れなかったが、予想もしていなかった声の低さに隊員達が息を飲む。 暫く俯いて何かを考えていたらしい流衣が、もう一度深い溜息をついてから徐に顔を上げた。
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