ネオンの下のその人は

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隊員達を見る瞳は常の親衛隊隊長ではなく夜の色を纏っている。 「あんた達、金曜の夜は空いてるの?」 「え、」 「連れてってあげるって言ってんの。ライ達のところに」 「、大丈夫ですっありが――」 「ただし」 歓喜に顔を輝かせる隊員達を制し、流衣は右手を掲げた。 隊員達の眼前に3本の指を立てる。 「1つ。自分達が見たこと、聞いたことは絶対に他人に言わないこと。親衛隊内ももちろんダメ。2つ。あの世界じゃ学校のルールなんて何一つ適用されないから、無事でいたいなら間違っても自分の意見押し通そうなんて考えないで。いい?空気になって、自分の身を守ることだけ考えて」 「………」 「3つ。ライをいつも見てる藤宮副会長だなんて思わないこと。あの世界でのあの人は別人だから。そして、ユキ―ー宮澤幸也には絶対絡まないで」 「ぇ……」 「ユキに何かしたら、ライは躊躇なくあんた達を潰すから」 隊員達を見つめる流衣の瞳が冗談ではないと言っている。 何より隊員達には、今目の前で話しているのが流衣本人なのかさえ分からなくなってきていた。 それほど、流衣の纏う空気が違うのだ。 いつも自分達をまとめている、少し素っ気ないけども何だかんだ面倒見が良い隊長ではなくて。 その空気の冷たさに、知らず隊員達の身体が小刻みに震えてきた。 「っ……」 「今のが守れないなら連れて行けない。どうする?」 「っ……、守ります。行きますっ」 「1つでも破ったら、自分の身が危ないと思って」 隊員達の決意した顔など興味もないと返事だけを耳で聞いて、流衣は手早く机の書類を片して立ち上がった。 「金曜、外泊届けを出しておいて。正門出たところに夜10時半、1人でも遅れたら連れて行かない」 「は、はいっ」 雰囲気に気圧されながらもはっきりと返事をした隊員を一瞥してミーティングルームを出て行く。 扉に手を掛けたところで、思い出したように流衣が後ろを振り返った。 「そうそう、いかにもお坊ちゃんです~な服装だけは絶対やめてね。歩いて5秒で身包み剥がされるから」 パタリと閉ざされた空間。 残された隊員達は皆呆然と流衣が出て行った扉を見つめていた。
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