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自分達を連れてきた流衣でさえ、顔を青褪め小刻みに震えている。
「ユキの怪我はそこにいんのが原因か?」
「違う。サクラ常連の奴等だ、ドレッドの」
「サクラ……ドレッド?この前の残党か」
「上手いこと逃げ出した奴がいたらしい。顔見たから確かだな。で、ユキを探してる最中に出くわしたのがアレ。ライに会いに来たんだと」
「………」
律が答えたことで逸れた來斗の意識が再度隊員達へと向けられる。
一斉に肩を震わせた彼らを一瞥しただけで來斗は踵を返した。
「とりあえず店戻るぞ。ユキ、ちゃんと消毒しろ」
「はーい」
來斗に続き、幸也、律と歩き出す。
流衣が肩の力を抜き、とりあえずの危険は脱したのだと隊員達は察した。
「……早く来いよ。また絡まれるぞ」
振り返った律に促されるも、中てられた殺気に身体の震えが収まらず上手く歩くことができない。
互いに手を取り支え合いながら、隊員達はどうにか先を歩く流衣について行った。
「……あれが、藤宮様の本当」
誰かがポツリと零した言葉がその場にいる全員の胸を抉る。
確かに学園でも、親衛隊との壁はあった。
でもきちんと会話はしてくれていたし、自分達のことをちゃんと認識してくれていたはずなのに。
生徒会の仕事で、役に立ったときには労いの言葉をかけてくれていたのに。
流衣は、学校での來斗とは違うと言っていた。
でもあんな温度のない瞳で見られるなんて、今にも殺されそうな恐怖を感じるなんて、想像もしていなかった。
「……ねぇ」
「、はい」
小さいけれど確かに聞こえた流衣の声に顔を上げる。
3人が入っていった店の入り口を見つめる流衣の表情は、見たことないほど硬いものだった。
「もう1回言うけど、今日見たことは絶対に他言無用だから」
「もちろんで、」
「何を見ても、絶対、誰にも、言っちゃ駄目だからね」
「……」
自分達はとんでもないものを見ようとしているのではないか。
来てはいけなかったのかもしれない。
後悔が、ドアにつけられた鈴の音と共に誰かの脳裏を過ぎっていった。
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