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すると草陰から、小さな羽の生えた妖精が飛び出てきました。
彼――男の子は、どんぐりのヘタの帽子を真っ直ぐにかぶり直して
伸びをすると、ポケットから何かを取り出し、花に振りかけました。
とたんに花がしゃんとして
青色がますますキラキラと
輝き始めました。
私は言葉を失ったまま、歩き続けていました。
どこかしこで、花たちが揺れ、言葉をかわし
妖精の笑い声が、響いています。
花たちの甘い香。
爽やかな緑の薫り。
熟れた果実の匂い。
そんなものを含んだ風が、私の耳元から駆け抜けていって
私の赤毛を揺らしている。
「現実的な私」ですら、声がでないぐらいの現実が
そこにはありました。
どこまでも遠くが見えていたはずですが
いつの間にか私の目の前に、巨大だけれど
極端に枝が横に広がった低木が、現れました。
ギョっとした事に、その低木の前には
映画に出てくるような西洋の龍が
横たわっていたんです。
その子は、頭を地面につけて寝ていました。
深緑色の鱗のついたお腹を上下に揺らして
私の拳ぐらいの大きさの鼻の穴から
寝息をもらしていました。
低木の木の枝は、低い位置で土台のように
左右に広がり、その上に、木自身が形作った
小さな床だけの部屋を乗せていました。
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