3. 秘密の扉

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私、夢中でした。 気がついたら、頬に涙が伝っていました。 「イヤです! 私、何をしても、シシリーを忘れませんよ! ここには私が必要なんです! 私いなくて、潰れちゃって、いいんですか? ねえ、店長! ち、ちょっと、店長! やめて下さい! 変な仕草をしないで!!」 店長は何かを小さく唱えると 右手を持ち上げ、人差し指の先で 私の額をまっすぐ指さしました。 私は両手で身をかばったまま、必死になって叫びました。 「いや! 私からシシリーを奪わないで! 私、ここで働きたい!」 その叫びの直後に、ばぁっと、風が吹いた気がしました。 たくさんの花びらと草たちが舞い 風の流れにとらわれ 私に打ち付けてきました。 身体をかばっていた腕が まとわりつく花々で重くなり痺れてくる。 そしてついに、支えきれなくなって 私は座り込みました。 駄目…もう耐えられない。 そう思った矢先に、世界が真っ暗になり 私は眠るように意識の底に落ち込んでいきました… …ちゃん…ちゃん… …ナちゃん… 「…カナちゃん!」 はっとして、目を開いた私の前に 心配そうな顔で見守る店長の顔がありました。 「はれ?」 何だか上手く喋れない。すんごい間抜けな感じ。 なんでこんな所で、寝ているんだろう。     
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