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「店長…寄り合いに出かけたんじゃあ…」
さっそく起き上がろうと力を込めた矢先に
つんと後頭部を走る傷みに、私は顔をしかめました。
「まだ動かないで。すごい腫れているわ。
一応、お医者様を呼んでおいたから」
店長があわてて起き上がろうとする私の肩を
押さえました。
痛む頭を少しずつ動かしながら、私はもう一度
そこに仰向けになりました。
見たことのない天井。見たことのない部屋。
そして嗅いだことの無い香り。
そこは少し暗くて、狭い部屋でした。
私が寝ているのは簡易的なベッド。
あとは机と椅子とダンボールの山。
それだけで部屋は一杯になっていました。
「忘れ物をした気がして、戻って来たのよ
ちょとだけ、嫌な予感もしてね…
そうしたらびっくり!」
ちょっと古臭い
大げさに手を広げるジェスチャー。
「カナちゃん、店先にお水をまいたでしょう?
そこで仰向けに倒れてるんだもん!
ホースを持ったままで…
心臓が飛び出るかと思った!
それであわてて、お店の奥に運んだわけ」
「あ…それで、ここは?」
私は目だけ動かして、あたりを確認する。
「シシリーの物置部屋よ。
物置部屋だったが正解だけれど」
私が落ち着いたのを確認してから
店長は振り返り、テーブルの上にある小さなポットを
手に取る。
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