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家から自転車で1時間。汗がダラダラとまらない夏の日も、吐く息で目の前が真っ白になる冬の日も私は毎週通う場所がある。1週間頑張った自分へのご褒美を買うために。 休みの日は家から1歩も出たくない私がそのお店を見つけたのは偶然だった。 接客業をしているとどうしても世の中のカレンダーとは休みがズレてくる。GWという魔の期間を終え久しぶりの休みだ。今日は怒涛の忙しさにすり減った心を癒そう。 カーテンの隙間から差す光に目を細め、時計をみるとちょうど12時を示していた。もう今日は1日布団の上でゆっくりしようと考えていた矢先、目についたのは支払い期限が今日までの水道料金。別に1日、2日過ぎたところで止まることはないのは分かってる。でも生真面目な生き方をしてきた私に期限を無視するという選択は無かった。 重たい腰を上げ着替えを済ませるとコンビニへ向かう。目的の場所が目の前に見えてきた頃、タイミング悪く信号が赤に変わった。 すこし汗ばんだ顔を手で扇いでいるとふと芳しい香りがした。隣を見ると、木こりのパン屋さんの文字と可愛らしいイラストが描かれた茶色い袋を手にした男性が立っていた。
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