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笑いをこらえている三人を見回し、「やっぱりドラムなんか引き受けるんじゃなかった……」と一来がぼやいた時、ガラッと部室のドアが勢いよく開けられた。
「大変なことになった!」強ばった顔で浅葱先生が叫ぶ。
「Death ClownのポスターがSNSで拡散されていたんだ」
「え、でも……、それは別に、問題ないですよね?」
ポスターを作成したいつかが、不安そうに首をかしげる。
ポスターには顔は出していない。メンバー名には芸名を載せていたし、個人情報は写真に限らず、何も流出させていない。問題はないはずだった。
「それが、SNS上のポスターでは、Death Crowのコピーバンドだという説明文が消されてるんだ」
いつかがはっと息を飲み自分のスマートフォンを取り出した。素早くいくつかの検索ワードを入力すると、拡散したポスターを見つけ出し、目を見開いた。
「何、これ……」
いつかが画面を主人と一来に見せる。 ロゴマークも加工され、Death Clownの後ろに描かれているのは、王冠ではなく本家と同じ翼を広げた鴉になっている。
「どうしよう……」いつかは机に手をついて、体を支えた。「大変なことになる……」と言って目を瞑った。
閉じた瞼がピクピクする。ゆっくりと瞼が持ちあげられると、その瞳には怯えが見えた。これから起こる災厄が、その瞳の中にはっきりと映し出されているようだった。
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