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全身から立ち上る気迫に押され、思わず叫び声を飲みこんで見つめる観客たちに、剣を振り上げるようにアイラが歌を叩きつけた。
マイクを高く持ち上げ、まっすぐに白い喉を伸ばしてシャウトするアイラの歌声がステージを蹂躙すると、Death Crowではなかったという失望は、驚きと衝撃で消し飛んだ。
Death Crowのメロディー、しかし初めて聞く歌詞に熱狂した歓声が沸き上がる。金色の髪がステージに舞う。ダンスのようではなく剣舞のように、ステージを切り裂く。
私と一来のドラムが激しくビートを刻む。いつかの高校生ばなれした卓越したギターのトレモロが胸を激しくかき乱す……!
一曲目が終わるころには、このバンドは何者だという声は、抗議ではなく正体を知りたいという好奇心に取って代わられていた。
しかし曲と曲の間で演奏者が話をするMCは挟まず、立て続けに演奏していく。ライブの盛り上がりに比例するように、「このバンドは何者だ?」という疑問が強まっていく。
歌への熱狂と強まっていく謎へのフラストレーションが絡み合い渦巻いて、歓声となって吐き出され講堂が揺れる。
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